はじめに
三大栄養素をご存じでしょうか?
三大栄養素とは炭水化物・脂質・タンパク質です。これらは「人間が消化・吸収でき、体のエネルギー源や構造に変換できる材料」です。本文では、その三大栄養素がどのように吸収され、私たちのエネルギー源となるかを解説します。
参考文献はページ最後に記載しております。私も調べつつ勉強した内容ですので、少し解釈の誤りがある可能性があります。
より詳細の内容は以下の文献を読んでいただきたく思います。
目次
- 食べ物が体内に入り、体外へ出ていくまで
- 炭水化物(でんぷん)の吸収
- タンパク質の吸収
- 脂質の吸収
- 参考文献
1.食べ物が体内に入り、体外へ出ていくまで
この章では、ざっくりとした説明でイメージをつかんでいただきたく思います。
まず、食べ物を口から入ると、食道を通り、胃に届きます。
胃では食べ物の一時的に貯蔵します。ここで、殺菌・分解が起こり、消化がスタートします。次に小腸です。小腸では主に、栄養の吸収が起こります。
小腸で吸収された栄養素は肝臓へ行きます。肝臓は栄養素の供給と、過剰であった場合、その栄養素を貯蔵することができます。
ここまでの過程で、栄養は吸収され、その後残ったものが大腸に行きます。大腸では水分を吸収し、便を形成します。一定量たまった便は肛門を介して体外へ排出されます。
つまり、栄養素の吸収には、胃と小腸、その後の栄養分配コントロールは肝臓が行っているということです。
2.炭水化物(でんぷん)の吸収
まず炭水化物(でんぷん)です。
炭水化物は、口内の唾液の成分アミラーゼによりマルトース(麦芽糖)に分解されます。そして、食道を通り、胃に到達します。
胃に到達すると、その環境は胃酸によりpH=1~2の強酸性。この環境では唾液アミラーゼが失活します。なので、マルトースまで分解できたものも、分解しきれなかったでんぷんもほぼそのまま小腸へ運ばれます。
そして、小腸へ入ると膵液が分泌されます。その中で膵アミラーゼと呼ばれる消化酵素が分解しきれなかったでんぷんをマルトースまで分解します。
その膵液には重炭酸イオンが含まれ、消化酵素の働きやすいpH = 7~8へと胃酸を中和します。
そして、マルトースは最終、小腸上皮細胞の膜に存在する酵素マルターゼにより、グルコース(単糖)へと分解されます。その後、小腸細胞内に吸収され、毛細血管へ放出されます。そして、門脈を通り肝臓に運ばれます。
肝臓では、グルコースを体内に供給するのか。過剰量なので糖(グリコーゲン)あるいは中性脂肪として貯蔵しておくのか。それともATP(エネルギー源)、アミノ酸の合成、DNA, RNAの材料として利用するのかが決まります。
3.タンパク質の吸収
次にタンパク質です。タンパク質は胃でペプシンにより、ポリペプチドに分解されます。その後、小腸に行き、膵液が分泌されます。中でも、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲンがオリゴペプチドまで分解します。その後、でんぷんの際と同様に小腸上皮細胞の膜に存在する刷子縁酵素(アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼなど)により、アミノ酸やジペプチド/トリペプチドに分解され、細胞内に吸収されます。でんぷんの際と同様、毛細血管へ放出され、門脈を通り肝臓に運ばれます。
肝臓では、血中アミノ酸量の調整が行われ、体内に供給されます。また、必要に応じてタンパク質合成(血漿タンパク質や各種酵素)が行われます。過剰なアミノ酸は分解され、窒素は尿素として排出される。また、炭素骨格は糖や脂肪に変換でき、血中糖度が低いと、糖に変換しグリコーゲンとして貯蔵。高い場合は、中性脂肪として貯蔵される。
4.脂質の吸収
最後に脂質です。脂質は小腸まで分解されず、小腸にて膵リパーゼにより脂肪酸とモノグリセリドに分解されます。
一度分解されると、小腸の細胞内へ吸収できるようになります。そして、細胞内で脂質(トリグリセリド)に再合成されます。再合成されるとカイロミクロンと呼ばれる粒子に包まれ、輸送されます。このカイロミクロンは内側が疎水性で表面が親水性です。そのため、脂質に吸着し、なおかつ水溶性環境下のリンパ管に輸送することができます。
その後、リンパ管を通り、血液と合流し、体内の組織に供給。過剰量は肝臓へ貯蔵される。という流れになります。
5.参考文献
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